《あきらめない!!》
福祉のまちづくり研究所研究第2グループ、リハビリテーション中央病院ロボットリハビリテーションセンターの研究開発部門では、リハビリテーション病院と隣接している研究所という地の利を利用して、病院側の医師、訓練士や研究所に所属している義肢装具士と連携、協力することで現場のニーズにあった使えるモノ作りや研究開発を行います。 | |
兵庫県立福祉のまちづくり研究所 特別研究員
博士(工学)
(H5年度 工学部電気電子工学科卒) |
左から:本田さん お一人置いて 陳医師 入江教授 |
今回は、工学部電気電子工学科(現:工学部電子情報通信工学科)を1994年3月に卒業され、大学院工学研究科電気電子工学専攻に進学、1996年3月に修了されました、本田 雄一郎(ほんだ ゆういちろう)さんをご紹介します。 |
◆ | 職 歴 | |
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平成13年10月 |
Homboldt-Universität zu Berlin, Charité Campus Virchow-Klinikum,Klinik für StrahlentherapieWissenschaftlicher Mitarbeiter |
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平成14年 5月 |
プロジェクト終了に伴いシャリテ病院を退社 |
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平成17年10月 |
Technische Universität München, Fakultät Maschinenwesen,Lehrstuhl Mikrotechnik und Medizingerätetechnik |
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平成19年 9月 |
医用技術中央研究所勤務に伴う移籍 |
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平成19年10月 |
Technische Universität München, Fakultät Maschinenwesen,Lehrstuhl Mikorotechnik und Medizingerätetechnik, Zentralinstitut für Medizintechnik,Wissenschaftlicher Mitarbeiter |
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平成20年 9月 |
医用技術中央研究所 退社 |
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平成20年10月 |
大阪産業大学工学部電気情報通信工学科・教養部非常勤講師(~H24.03) |
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平成22年 3月 |
大阪産業大学工学部交通機械工学科 非常勤講師(~H24.03) |
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平成24年 3月 |
現在(2013年2月)兵庫県立 福祉のまちづくり研究所 特別研究員 |
◆ | ロボット技術を研究しようと思ったきっかけについて | |
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本田さんは中学時代に、技術をうまく使えば人を助けることができるかもしれないと考えだしたそうです。音声認識ができれば体を動かせない人でも話すことにより、様々なモノを操作できるようになるのではないか。今、そういう時代がとうとうやってきています。 しかし、高校時代に音声認識技術が進歩しつつあることを知りました。その後、手がなければ困るなと考えだして、義手に興味を持ちだしました。私(森本)などは、一般的にロボット技術といえば、産業機械やアシモ君みたいな機械ロボットを想像してしまいます。 ところが、本田さんの考えるロボット技術は少し違っていました。 本田さん曰く、人から信号を測り取るセンサ技術、人の動きを助けるアクチュエーター技術など技術を組み合わせて実現するモノに対して、ひとつずつその技術を説明するよりロボット技術という一言でくくるほうが聞き手はイメージが付きやすいのではないでしょうか。「ロボット技術」というのは今の流行り言葉であり、実際にはロボットに利用されている様々な技術を指しています。本田さんの考え方の根底にあるのは、ロボットに利用される人間ではなく、あくまでも人が主体だということだと思います。 |
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◆ | 交換留学について | |
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留学は2回生の後期から1年間行かれています。これは、行っている間よりも帰ってきてからの方がきつかったと話されていました。すなわち、通常卒業をするためには1年間のブランク分の勉強も取り戻さなければいけなかったので、非常にハードな時期だったとのことです。そんな努力のかいがあって無事4年間で卒業し、大学院に進学。大学院を修了し、再び留学をすることになります。 最初の留学を終えて日本へ戻ってきてから当時の僕の目には、日本は人が働くために生きている国、ドイツは人が暮らすために生きている国に映っていました。教育のされ方も、日本とはかなり違っていて、講義と実習がうまくかみあった教育がヴュルツブルグ大学ではなされていると体験していました。 そういう環境で自分が興味を持ったことを学びたいと真剣に考えました。当初はそのままドイツに残るつもりでもいました。博士号を得る前ならそれで良かったのかもしれません。しかし一旦、博士となるとドイツでは社会を牽引していく力がある人たちとして見られるようになります。博士号を得た人に対して役所での対応が急に丁寧になるほどの変化があります。同時に責任もかかってきます。その先には、多くの人が途中で諦めてしまう過程を突破し、博士となった人々の間で競争が待っています。僕の立場から見ると母国語を操る天才たちを相手に、ドイツ語で勝負をしなければならないわけです。僕が書類をドイツ語で1枚書く間に、相手は3枚以上書いてしまいます。しかも、彼らは正確な表現と適切な単語を選りすぐった書類を作成していきます。この競争では僕は勝ち目が薄いです。 ところが、僕が得た知識や技術、そして人脈を日本で展開するとなると、状況は一転します。展開するだけではなく、むしろ日本で再び人脈を作り、双方を結びつけることができれば、グローバルに社会を良くすることに貢献できます。おまけに、日本の高齢化のスピードは著しく、市場として考えると僕の得た技術を活かすには絶好の場所でもあります。そういう考えもあり日本へ戻ってきました。 ★後輩たちにアドバイス。 僕自身がヴュルツブルグ大学へ交換留学生として派遣していただいた経緯もありお伝えしたい。大学が準備してくれている交換留学制度を上手に利用して、海外で生活しながら他の国の状況を見て、そして日本を振り返ってもらいたい。 |
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平成 2年 4月
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大阪産業大学 電気電子工学科 入学
平成3年10月から1年間交換留学 大阪産業大学 電気電子工学科 卒業 |
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平成 6年 4月 |
大阪産業大学大学院 工学部電気電子工学 専攻 |
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平成 8年 3月 |
Technische Universität Berlin, Fakultät Maschinenbau |
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平成17年 9月 |
Technische Universität Berlin, Fakultät Maschinenbau |
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平成20年 6月 |
学位論文「義手操作用の解剖学に基づく測定システム」にて、ドイツ共和国連邦・ミュンヘン工科大学機械工学部よりドクター・インジニアーを学位授与される |
◆ | 仕事について | ||
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本田さんに信条もしくは座右の銘といったものはお持ちですかとお伺いしたところ、即座に「あきらめない」が返ってきました。これはお会いして初めのころに質問させていただいたのですが、少年時代からの夢の実現に向かって努力、研鑽を積まれた経験上から発せられた言葉であるということが良く理解できます。また、留学中も含め、人生において良き出会いがあり、運も味方してくれたとも言われていました。 取材をさせて頂いたのは1月28日、共同研究をされている本学の入江教授が、学生さん、企業の方を伴って来られる日でした。ご一緒に施設内の見学をさせていただき、研究の一端に触れられたのは非常に有意義な時間でした。 兵庫県立福祉のまちづくり研究所のコンセプトは、障がい者の方を直接補助する装具の研究はもちろんですが、障がい者の方がリハビリを終え、現場復帰なり自宅に帰ったとき、快適に暮らせる環境、街づくりなど両面の研究をすることを目的としています。また、ここ社会福祉法人兵庫県社会福祉事業団総合リハビリテーションセンターは、病院、リハビリセンター、生活支援・相談、研究所などが一体となった施設で全国的にも数少ない施設といえます。 研究所と病院とが隣接している為、医師、訓練士、各種療法士、研究者とが常に連携し、一体となって研究・開発できることが非常に重要なファクターです。 ほとんどのケース、各種機関が独立しているため、相互理解がとれているようで、意外とコミュニケーションが不足していることが多いというのが現状のようです。本田さんも仰っておられましたが、大学で研究しているときにはできなかったことがここにはある、できると。そういったお話を伺った後で、研究所から病院へ移動するときに見た僅か二十メートルくらいの連絡通路(2階の渡り廊下)が印象的でした。 今回ご多忙の中、リハビリテーション医療に並々ならぬ情熱をお持ちの陳 隆明医師(医学博士、兵庫県立リハビリテーション中央病院ロボットリハビリテーションセンター長、神戸大学准教授)に施設見学、リハビリテーション医療現場の現状、ロボット技術を利用したリハビリテーションの現状などをご講義頂きましたことに感謝申し上げます。 |
◆ | 大学や校友会に望むこと | |
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人間の人生は良くも悪くもどう転ぶかわからないので、準備万端にして結果を待つことも大切ですが、自分のおかれた状況を観て、判断し、柔軟に対応できる力をより多くの学生さんたちに学生生活中に獲得してもらいたいです。また、異業種交流ではないのですが、他学部学科の仲間と協力し、個々の強みを活かし合うようなプロジェクトなどに是非参加してもらいたいです。工学部の学生さんがたには、是非とも手を動かして、モノ作りを行ってもらいたいです。「失敗は成功のもと」をモットーに、失敗から学べることも多々あります。そういうことが行える場である大学を有効活用して、意識して自分を成長させてもらいたいです。 最後に、僕自身がヴュルツブルグ大学へ交換留学生として派遣していただいた経緯もありお伝えしたい。大学が準備してくれている交換留学制度を上手に利用して、海外で生活しながら他の国状況を見て、そして日本を振り返ってもらいたい。 |
◆ | 趣 味 | |
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やりたかったことが仕事になったこともあって、仕事が趣味のようになっています。 |
◆ | 留学生の輪 | |
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ドイツ ヴュルツブルグ大学との交換留学経験のある方は校友会事務局までご連絡下さい。留学経験の有る方たちの座談会を企画したいと思いますので、近況報告などご連絡ください。 |
これからもますますご活躍されることをお祈り致します。 | ||
(取材協力:兵庫県南支部 支部長 赤田 護) | ||
( 取材・記事編集:広報事業部 森本 勉 ) |